ARTHUR-AQUAMARINE's MEMO

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◇ 05 思想の新潮流 ポストモダン以降

  • 批判理論から現代思想まで、思想の潮流を把握しよう。
  • 「道具的理性」や「野生の思考」など、重要用語の背景にある考え方を理解しよう。
  • ラカンやリオタールなど、さらに踏み込んだ知識にふれてみよう。

⑥ 現代思想の「倫理-政治的」傾向

「倫理-政治的」傾向
 欧米の現代思想は、近年「倫理-政治的」観点を強調する傾向を強めている。それは、従来の倫理学(=個人道徳の探究)や政治学(=公共の利害の探究)などの個別的な学問ではカバーできない複合的な領域を、横断的に扱おうとするものである。
レヴィナスの思想
 レヴィナス ※(1)の哲学的な関心は「他者」である。「他者」とはいったい何か。レヴィナスは、他者は自己(=私)とも物とも、まったく類似性を持たない何かだと主張する。レヴィナスの観点では、自己と他者はまったく非対称的である。なぜなら自己は他者に一方的にさらされていて、否応なく他者への「応答(=責任)」へと差し向けられているからだ。レヴィナスは、「倫理」というものが可能であるための唯一の根拠は、他者に対するこの一方的な責務であると説いた。
ハンナ=アーレントの思想
 ハンナ=アーレント ※(2)は、人間の根本的な条件は、共通な世界に他者とともに複数的に存在することだと主張した。またアーレントは、物に働きかける労働や仕事、そして人間が人間に働きかける「活動」とを区別してとらえた。「活動」とは、地上に存在するのが複数の人間であるということに対応した優れた行為である ※(3)。ところが、近代社会では私的な経済的関心だけが増大し、人々から共通世界への関心が失われ、政治から公共性がますます消失してゆく。アーレントは、このような傾向が大勢に順応しやすい大衆社会の順応主義の核心にあるものだと考え、「政治における公共性」を再生させる必要を論じた。
ハーバーマスの思想
 フランクフルト学派の第2世代に属するハーバーマス ※(4)は、アーレントのいう「活動」としての政治を評価するが、アーレントが見落としている点も指摘した。
(1) システムの合理性
 ハーバーマスの考えでは、近代社会には物の生産や再生産に貢献する「システム合理性」の領域がある。システム合理性は、行政や経済の基盤にして、権力や貨幣という媒体を通じて社会の「システム統合」を目指すもので、これがなければ「政治」は成立しない。アーレントが見落としているのはこの点である。
(2) 対話的理性
 また近代社会には、システム合理性だけでなく、文化や価値の再生産を司る「対話的合理性」の領域が存在する。これは人々が対話や討論を通じて、強制力によらず「合意」によって社会統合をめざそうとするもので、人間の理性の革新にはこの対話的理性がある。
(3) 生活世界の植民地化
 しかし、現代社会では、強制力を持ったシステムの合理化により、対話的理性による対話的討論が徐々に浸食されている。ハーバーマスはこの状況を生活世界の植民地化 ※(5)とよんでいる。ハーバーマスによれば、今日の「生活世界」が文化的な不毛に陥っているように見えるのは、専門文化がエリート集団(テクノクラートなど)だけに占有されていることが原因である。この不毛を解消し、各文化領域を再び生産的にするためには、専門分化を大衆に開放することが必要になる。この構想こそハーバーマスが近代から今日に引き継がれた、もっとも重要な遺産と考えるものである ※(6)
ロールズの思想
(1) 公正としての正義
 ロールズ ※(7)が取り組んだのは、ロック、ルソー、カントによって提唱された社会契約説を一般化・抽象化して、最大幸福原理しか持たない功利主義の欠陥を克服することである。功利主義では、最大化された幸福の総和がどのように分配されるのが正しいのかは問題とされない。それに対してロールズは、公正としての正義という正義論を体系的に展開した。
(2) 正義の原理
 公正としての正義は、具体的には次のように示される。
基本的自由(政治的自由、言論の自由、思想・良心の自由など)は、全員に平等に分配されなければならない(平等な自由の原理)。
競争によって社会的・経済的不平等が生じるとしても、公正な機会均等が確保された上での公正な競争でなければならない(公正な機会均等の原理)。
競争によって生じる格差は、最も不遇な人々の利益を最大化する方向に調整されなければならない(格差の原理)。
コミュニタリアニズム(共同体主義)の思想
 コミュニタリアニズム共同体主義)は、倫理的-政治的に正しいかどうかの判断は、それぞれの共同体における規範に依存すると主張する。つまり、ある文化共同体のコンテクストを超えてしまうような「正義」の概念は存在しないのである。このような考え方をとる思想家には、アラスデア=マッキンタイア ※(8)チャールズ=テイラー ※(9)マイケル=ウォルツァー ※(10)マイケル=サンデルなどがいる。
 総じて彼らはロールズに代表されるリベラリズムに対して敵対的な立場を取る。たとえばロールズが、正義の原理を正当化するために考え出した「原初状態」 ※(11)のような概念を拒否する。特にサンデルは、自己に関するロールズの定義を批判する。ロールズはリベラリズムに根拠を与えるために自己を形而上学的に説明するが、個人のアイデンティティには社会にかかわる次元があることを無視していると批判する。
 マッキンタイアは倫理の問題へアプローチする。道徳的存在としての人間とは何であるかを合理的に説明しようとすると、個人が社会の伝統と実践の中に埋め込まれているという事実を認めなければならない。マッキンタイアによれば、倫理的行為の前提条件となるのはその行為の意味がコミュニティで共有されているということであり、「徳」についても、その意味がもともと共有となっていることが不可欠である。
 テイラーは特にコミュニティの成員が言語を共有していることに注目する。人間性・道徳性・論理的にものを考える能力などが生じるためには、言語が共有されていることが必要である。そればかりか、自己解釈的な動物である人間にとっては、自己解釈のために必要な言語は社会的な現象であり、共同体の存在は人間が行為したり、解釈したりすることができるための前提条件なのだと主張する。
 ウォルツァーも、どんな正義の概念もそのコミュニティが共有する意味の体系に依拠しているのだとする。したがって、正義が論ずる財や財の配分は、常に社会的な財として扱わなければならないという。
アマーティア=センの思想
 アマーティア=センは、経済学と哲学を架橋することによって、社会問題や政治問題に経済倫理の観点を導入することを試みた。
(1) 合理的な愚か者
 従来の新古典派経済学は、人間の基本的な動機を「自己利益の最大化」だと考え、利己的な人間像を中心に経済活動を分析してきた。ところが、センによれば、そのような人間像は、倫理的関心を度外視して行動の動機を自己利益だけに狭める合理的な愚か者に過ぎないという。
(2) 社会的コミットメント
 経済学は人間の倫理的な動機も含めた行動を分析し、指針を与えなければならない。そのような経済学が想定する人間像は、他者を道徳的に考慮し、他者との相互関係を行動の動機とすることができる「社会的コミットメント ※(12)が可能な個人であると、センは主張した。
(3) 潜在能力(ケイパビリティ)
 その上で、センはロールズの正義論を批判する。ロールズの正義論ですら、財物の再分配を論じているだけで、財物が分配される側の能力の不平等を問題にしていない。それに対してセンは、基本的な潜在能力(ケイパビリティ)の平等を主張する。すなわち、生活のあり方全般について、潜在能力を開発するのにふさわしい条件を作るような分配が必要だという。センは生活の質を所得や効用からだけで評価するのではなく、人の潜在能力という観点から善き生活を定義したり、比較したりする方法を提案している。
分析哲学
ハンナ=アーレント
ハーバーマス
ロールズ
アマーティア=セン
「他者」という存在の考察
政治における公共性の再生を主張
対話的理性生活世界の植民地化の定義
公正としての正義という正義論を展開
合理的な愚か者社会的コミットメントの定義
潜在能力(ケイパビリティ)の平等を主張
注釈
(1) レヴィナス(1906~1995)
リトアニア出身のユダヤ系フランス人哲学者。主著『全体性と無限』『存在の彼方へ』。
(2) ハンナ=アーレント(1906~1975)
ドイツ生まれ、アメリカに亡命したユダヤ系哲学者。主著『全体主義の起源』『人間の条件』『革命について』。
(3) 活動=優れた行為
特に古代ギリシャのポリスまでさかのぼる「政治」という活動は、本来公共的な領域で人々が人々に働きかける創造的な行為であったという。
(4) ハーバーマス(1929~)
ドイツの社会学者。主著『公共性の構造転換』『晩期資本主義における正当化の諸問題』『コミュニケーション的行為の理論』『事実性と妥当性』など。
(5) 生活世界の植民地化
「生活世界」とは、自然科学によって客観化された世界に対して、直観のレベルで根源的に現れている世界のことである。
(6) 「合意」により社会統合を目指す構想
ハーバーマスはこの「近代のプロジェクト」の継続こそが必要だと主張している。
(7) ロールズ(1921~2002)
ハーバード大学で政治哲学を講じてきた哲学者であるが、1971年に出版した『正義論』で一躍、現代政治哲学の論争の中心人物となる。
(8) アラスデア=マッキンタイア
(1929~)
主著には『美徳なき時代』がある。
(9) チャールズ=テイラー(1931~)
主著には『自我の源泉 近代的アイデンティティの形成』がある。
(10) マイケル=ウォルツァー(1935~)
主著には『正義の領分 多元性と平等の擁護』『正しい戦争と不正な戦争』などがある。
マイケル=サンデル
- Michael J. Sandel [1935~]
 ハーバード大学での彼の「政治哲学」の講義を録画したテレビ番組『ハーバード白熱教室』は、日本でも放送され話題になった。
(11) 原初状態
原初状態」とは、ロールズが「正義の原理」を導出する際に用いた過程的な状態のことである。原初状態にあっては、集団の成員は「無知のヴェール」に覆われていて、自分と他者の能力や立場に関する知識は全く持っていない。そのような原初状態に置かれた場合、人々は諸原理に同意するとされた。
アマーティア=セン
- Amartya Sen [1933~]
 インド人経済学者。アジアで初のノーベル経済学賞を受賞した。主著『合理的な愚か者』『不平等の再検討』など。
(12) コミットメント
「コミットメント」とは、現実参加、約束・義務・責任の履行など多義的な意味をもつ言葉。センはその多義性を生かすように考慮している。
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